31.7.16

英語の先生の思い出

先月受けたIELTSの結果がようやく帰ってきました。ライティングとスピーキングがなかなか点が上がらなかったのですが、今回はどちらも大学で推奨されている点を取ることができたので少し安心しました。「少し」というのは、本当はあと0.5ずつ上の点数を取りたかったからですが、これは次回への課題といたします。
SOASに入ってから、教師と1対1で行う英語のコースを取ってライティングを見てもらったのが功を奏したように思います。先生は、体格のがっちりした、いかにも強そうなおばちゃんといったふうのイギリス人の先生で、話し方も外見を裏切ることなく豪快な人でした。初めての授業の日、自己紹介で「日本人なので冠詞が苦手です」と言うと、大笑いして「あなた、面白いわねーっ(←この部分だけ日本語)」と返されたことを思い出します。日本に英語教師として数年住んだ経験もあるので、日本人の苦手分野がよく分かっているようで、冠詞だけではなく、自然な文章の作り方や副詞の効果的な使い方なども教えてくれました(「あんたの文章は短すぎる。最低20から30単語はないと」)。内容があまりに濃いので、1回30分、全5回の授業があまりにも短く感じたほどです。
ある日、私が書いたものを見せたとき、先生、「あら、あなた以前アイルランドにいたの?」と聞いてきたので、「アイルランドには行ったことないですよ」と答えたことがあります。それを聞いて先生、「この to be sure っていう表現だけど、アイルランド英語よ。ブリティッシュ・イングリッシュじゃないわ。どこで覚えてきたの?」と言うではないですか。 「アメリカにいたときに周りの人が使ってたと思うんですけど。何かの記事でも見たことがあります」と驚いて伝えたら、「アメリカはアイルランド系移民が多いからよ」とにべもなく返されました。「私たちは使わない」と。旦那の知り合いの英語教師の方にも聞いてみましたが、やはり同じ答えでした。
この授業が、イングランド人の英語こそ英語である、という強固な信念を始めて垣間見た瞬間で、「別にどうでもいいじゃんか」という生半可さはこの国では到底許してもらえそうにない、と覚悟しました。特にアメリカ英語に対する厳しい視線をひしひしと感じます。前述の旦那の知り合いは、「アメリカ人の英語って単純なのよね」とさらりと言ってのけました。しかし、地球上で最も話されている言語の1つであり、公用語としている国や地域も数多い言語ゆえ、ブリティッシュ・イングリッシュなるものを識別するのは結構大変です。本を読み、ニュースを聞き、の連続と積み重ねで何とかするしかないのでしょう。
最後の授業で、その先生は「テスト頑張ってね」と言ってくれたあと、「北海道のスキーは最高だわ。雪質がとてもいいのよ。また行きたいわ」と目を細めていました。またお目に掛かりたいものです。

20.7.16

ビザ申請で帰国することに

ちょいと困ったことに、我々夫婦はビザ更新のために9月中に一時帰国せねばならんことになりそうです。
去年までは、博士課程のオファーをすでにもらっていて、修士課程修了見込みであれば、イギリス国内でビザ延長の手続きができました。
それが、今年4月の改定で、ビザ延長には修士号を既に持っていないといけないということになり、でも修士号授与の決定は大抵11月から12月にかけてで、10月には終わってしまう学生登録には当然ながら間に合いません。できることはただ一つ、一度本国へ帰って新しいビザを申請することです。
移民対策とはいえ、どうなのでしょう。友人からは「ブレクジットの影響なのか」と心配されましたが、4月にあった変更なので関係はありません。ただ、これがすぐに大学へ通知されるわけではなく、ガイドラインが7月に上がってくる、というのは迷惑ですな。もうちょっと早くできないのか。修論執筆もあることですし。
メイ首相は、イギリス国内に5年以上住む非EU圏の人々に対して、最低年35,000ポンドの収入があることを証明できなければ本国へ帰させる、といった政策を実行したいようです(ちなみにイギリス人の平均給料は年およそ25,000ポンドとのこと)。いやはや、住みづらくなりそうです。

11.7.16

次期保守党党首が決まる

2時間前、アンドレア・レッドサムが保守党党首選から脱退することを発表、次期保守党党首はテレーザ・メイに決まりました。驚き半分、納得半分といったところでしょうか。
驚き半分というのは、すでに候補者として確定したのに、早い時期に辞退したこと。納得半分は、先週末からの一連の報道で、「こりゃもたないだろうな」と思っていたら、事実そうなったということにつきます。
先週末、タイム紙のインタビューで、レッドサムが「メイには子供がいないが、自分は母親だからこの国のためにできることがあるし、有利である」という発言をしたことが掲載され、証拠の音声も公開されたのです。これが、国会議員からだけではなく国中から強い批判を招きました。子供がいようがいまいが、有効な政策を打ち出して実行できるか、その職に見合う能力・経験を持っているのかが問われるべきです。これは保守党党首だけではなく、どんな仕事にもいえることだと思うのですが。
経験については、レッドサムの実績が疑問視されており、メイと比較してやはり数段劣ることが、党首選で不利だろうとすでに言われていました。そこへ母親発言が追い打ちをかけたわけです。
BBCのコメンテーターだったと思いますが、「レッドサムはEU首脳陣とやり合うための経験もなければ、ジャーナリストへの対応もまるで分かっていなかった。党首になるための準備ができていないかった」とばっさり切り捨てていました。

というわけで、次期党首・首相はメイで決まり、キャメロンと交代するのがいつになるかが関心の的となっています。
メイの発言を聞く限り、かなりの強行派です。もともと残留派でしたが、"Brexit means Brexit!"ときっぱりと意思表示をしています。「メルケルとやり合えるのは私」と言い切る彼女はかなりの胆力の持ち主といえるでしょう。しかし、それだけではなく、ユーモアのセンスも持ち合わせています。「私はこれまでに、EUでの会議で様々な交渉にあたり、実際に功績をあげてきました。ボリスがEUでの会議のあと持って帰ってきた物を覚えてます?放水車だけですよ(ボリス・ジョンソンが買った3台の対デモ用放水車のこと。ちなみに、現ロンドン市長のサディク・カーンは、「必要ないので売却して、その売上金を若者支援に使う」と言っています)」
メイはカリスマ性に欠ける、という批評家もいますが、たとえ持ち合わせていても政治的成功には必ずしも結びつくわけではない。その人には、「キャメロンにはあったのでしょうか?」とぜひ聞いてみたい。そして首相になったときはあれだけの人気を誇ったブレアも、今やイラク戦争についてのチルコット報告書によって戦争責任を問われています。一方、「メイは実務経験はあるけれども、国の制度や方針を全面的に変えることができるほどの発想力はない。『第2のサッチャー』にはほど遠い」という意見もあります。それはこれから次第でしょう。
以上お昼のニュースでした。