26.12.18

良いお年をお迎えください。


怒濤の1学期があっという間に過ぎてしまい、とうとう年の瀬です。今学期何もここに書けなかったのは無念。来年はもう少し書きたいと思います。
猪の置物(写真手前左)が運良く見つかったので今年はこの1枚で締めます。豚も置いているのは、中国だと豚と猪の区別をしないというので、代わりによいかなと思っていたからです。
それでは良いお年を。

26.7.18

さらば、ホットミルクティー

ああ、とうとうこの日が来てしまったか・・・ごめん、もう限界なんだ!
と大げさに嘆いてみたりするけれども、我々にとっては大ごとである。それは紅茶。毎朝欠かさず飲んでいた熱い紅茶に、もうまったく手が伸びない。理由は簡単で、ここ最近暑すぎるからだ。今週はずっと30度越えで、今日はなんと35度まで上がるらしい(!)おかしいなあ、ここ、北緯51度のイギリスのはずなんだけど・・・北海道よりも北にあるとは思えない暑さだ。
昨日も今日も、BBCのニュースは暑さの話題で持ちきりで、必ず東京から特派員のレポートがある。もう「うわ、暑そう」としか感想が出てこない。特派員の額の汗が事態を雄弁に物語っている。
閑話休題、紅茶のこと。熱いのがだめなら冷たくしちゃおう、ということになり、アイスティーを作ることにした。スーパーでレモンとミントを買って、さあ容器を、と来たところで問題発覚。いくら探しても適当な容器が見つからない。せいぜい1リットルぐらい入るガラス製のボトルか、水筒、もしくはピッチャーしかない。そうこの国では日本の家庭でやっているような、夏に冷たい飲み物を作り置きするということが(多分)ない。したがって容器もない。
うーん、盲点だった・・・でも思えば、冷たいものをそんなに飲まない国である。アイスコーヒーやアイスティーがない喫茶店(スターバックスの一部店舗含む)も多いし、あればあったでお店はわざわざ「アイスコーヒーあります」と看板を出してるし(もしくは窓ガラスに書く)、おまけに7月の平均気温は19度、最高気温は23度、25度を超えるともう暑くてやる気が出ない国だから、冷たいものはほとんど飲まなくても済んでしまう。ビールで充分でしょうということになる。
こうなったらいつも紅茶を淹れているポットと、コーヒーメーカーのポットにそれぞれ作るしかない。合わせて3リットル。これにレモンの輪切りとミントを入れて、あら熱が取れたら冷蔵庫に放り込んでしばし待つ。これで乗り切るしかなさそうだ。
当然ながら今我が家はものすごく暑いのだけれども、これに気付いたのは実はつい昨日のこと。温度計を確認したらなんと29度だった。湿度が低いから気付かなかったけれども、普通に考えたらかなりまずいだろう。ちなみに今日は、さきほど午後1時半の時点で30度を超えていた。そりゃ冬暖かいわけだ。我が家のクーラーの形をした扇風機が憎らしい。あまりに冷房が効かないから窓全開で凌いでいるありさまだ。意味ないじゃんか。
こんな状況だから、昨日スーパーから帰る前に旦那さんに送ったラインメッセージに、きっと皆さん同意してくれるに違いない。
「どうしよう、涼しすぎてスーパーから出られないわ!」

22.7.18

ワールドカップに便乗して

写真は散歩をしていたら見かけた建物。窓枠と重なって分かりづらいですが、イングランド国旗が六つ全ての窓に掛けられています。記憶では、右隣の建物の窓にはポルトガル国旗が掛けられていましたが、ポルトガルがグループリーグ敗退となるや外されてしまったようです。無念。

サッカーのワールドカップが終わってしまいました。決勝戦はVARの判定も含めて疑問に思うこともありましたが、それもサッカー、ということなのでしょう。私たちは家のテレビで観ていまして、終わったら「ラ・マルセイエーズ」を大声で歌う人たちが大通を歩いて行くのが聞こえました。特に"Marchons, marchons!" の部分は声が割れんかぎりの力を込めていました。そのあと飲みに行こうとしたら、女性が車の後部座席から身を乗り出してフランス国旗を両手で広げ、叫びながら走り去っていきました。何はともあれ、おめでとうございます。
今回は、誰もイングランドチームに期待していなかったというワールドカップのちょっと笑える便乗・余波について。

1. ハリケーンという名前のパイがあった
パイミニスターというパイ屋さんがワールドカップ期間中に売り出したパイがこちら。

The Hurrikane とあり。スペリングからして明らかなように、イングランド主将の Harry Kane と hurricane をかけたものです。イングランド戦を観るまでハリー・ケーンのことを知らなかったので、試合中に「ハリケーン」と聞こえるたびに「こんなに天気がいいのに、なぜハリケーンがロシアで叫ばれているのか?」と思っていました。ちょっと弁解をさせてもらうと、Harry の a はとても短く言われることが多く、しかも実況中だとなおさらなので、hurricane の u の発音と近く聞こえるのです。

2. 携帯通信会社の Three が期間限定で Three Lions になった
写真はこちら。私たちも使っている携帯会社の Three の店舗名の横に、かわいいライオンが3匹。中華街の近くで撮影しましたが、他の店舗でも見かけました。

イングランド王室の紋章が3匹のライオンで、ユニフォームにも入っているため、Three Lions といえばイングランドチームのことになります。

3. ワールドカップ期間中のパブでは、他人にむやみに話しかけてはいけない。でもいいこともあるかもしれない。
バラ・マーケットの近くにあるパブで飲んでいたとき、向かいに座っていた50代と思われる男性に「イングランドチームがグループリーグを勝ち進んでますね」と話しかけたら、「僕はスコットランド人だから、イングランドなんて負ければいいと思ってる」と返されて冷や汗をかきました。「うっわ、しまった!」と思ったのですが、おだやかな方だったので嫌みさは微塵もなく、むしろ「今回は日本だって活躍してるじゃないか。次が楽しみでしょう?」と話しかけてくれました。しばらくお話ししたのち、「じゃあまたね」と握手をしてお店を出て行かれました。
サッカーだったからまだよかったのかも。これがラグビーだったらどうなっていたことやら・・・

4. サウスゲート駅がガレス・サウスゲート駅になった
ロンドン北部の地下鉄駅、Southgate 駅が、イングランド監督ガレス・サウスゲートに敬意を表して16日と17日の二日間だけ Gareth Southgate 駅になりました。地元の人も好意的で「ずっとこのままがいい」という人もいるらしい。ぜひこちらからどうぞ。動画もついています。
https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-44844999
サウスゲート監督のおかげで、チョッキが復活しつつあるそうで、ショーウィンドウにもチョッキが並んでいるのをよく目にします。ところで、イギリス英語ではチョッキを waistcoat と言うんだそうです。vest というと袖無しの下着のことなんだとか。ただし、アメリカでは vest がチョッキになります。 いやー、知らなかったわ。
駅名は便乗しすぎな感がありますが、1990年以来久しぶりの4位と思えば、これくらいはいいのかなと思いました。

10.7.18

暑さとサッカーと

いやはや、昨日までのロンドンは例年にない暑さでまいっていました。30度の日が2週間以上続いていて、昼も夜も暑く、したがって寝付きも悪くてしんどいものがありました。レンガ造りの冬仕様の家になぜかまったく効かないエアコン。扇風機を買っていく人を何人通りで見たことか。今日は23度まで下がり、天気も曇りで非常に過ごしやすいです。

さて、今日はワールドカップ準決勝ベルギー対フランス戦。なんだかこれが決勝のような感がありますが、面白い試合になりそうなので見なければ。これまでサッカーにあまり興味がなかったのですが、ワールドカップを見始めたら面白くてはまってしまいました。解説が充実しているからでしょうか。選手がどう空いた空間を使い、攻めていくかを解説してくれているので、構造的に見ることが要求されるんだなと思います。よいプレーには最大限の賛辞を贈り、だめなプレーにはものすごく手厳しい、これもはっきりしています。日本対ベルギー戦のときは、結果は残念だったけれども日本の戦い方を絶賛していました。BBC の Man of the Match には乾選手が選ばれていましたし、あのシュートには"Lovely finish!"とか"It is a truly world class goal!"などと解説者が口々に叫んでいたのを思い出します。乾選手がフリーになるように動いた香川選手の動きもよかったですね。ポーランド戦でも、後半こそ"Surreal!"と言われたものの、前半は日本のプレーに感心していて、「こんなにボールを確保して攻めてくるチームと戦うことになるのだとしたら恐ろしい」とまで言っていたのでした。そのときはまだベルギーとイングランドのどちらが日本と戦うことになるか分からなかったですしね。

先週土曜日のイングランド対スウェーデン戦をパブで見ていたら、90分間、お客さんの大半は立ったまま、仁王立ちでした。イングランドがゴールしたときの、腹の底から噴き上げる歓声の迫力はすさまじいものがありました。その前のコロンビア戦もパブで見てましたが、テレビ画面の前にみな釘付け、PK戦を食い入るように見ていたのが印象的でした。最近いいニュースがなかったので、イングランドが4強に入ったのがそれはそれはもう大ニュースで、街を歩いているとイングランド旗を付けた車や窓を見かけるし、土曜日の公園ではサッカーボールを蹴っている子供達が楽しそうで、スポーツの効果って大きいんだなあと実感しました。イングランドチーム監督のガレス・サウスゲイト監督はその功績と実直さから、ツイッターで#GarethSouthgateWould (ガレス・サウスゲイトはこういうことをするだろう)で話題になっています。例えば「ガレス・サウスゲイトはバンク・ホリデーのあと、いつがゴミ出しの日か教えてくれるだろう。ついでに、ご近所さんにも声がけをするだろう」とか。秀逸だったのは「ガレス・サウスゲイトは政府内のごたごたを片付けて、ブレクジットをよい形で導いてくれるだろう」でしょうか。イギリス人の切実な願いが表れていますねえ。

21.6.18

Summer Solstice




今日は夏至の日。夜9時半を過ぎてもまだ明るい季節を目一杯楽しむために。

14.6.18

外国で住む場所を決めるときに留意するとよいこと(多分)

日本人が多く住んでいるからという理由だけで場所を選ばない方がいいこともあります。たしかに、分からないことが多いのは不安だし、周りに日本人がいるところの方が何かあったときに安心できる、という気持ちはよく分かります。ところが不思議なもので、同じ日本人だから、外国で苦労しているから、といって親切な人ばかりではありません。もちろん、中には人格の優れたすばらしい人もいて、我々もその方には大変お世話になっています。しかしみんながそうとは限らないのです。
私が20年近く前に家族とアメリカに住んでいたころ、すでに住んでいたとある日本人の一家には困りました。「口は災いの元」を体現するとしたらこんな感じかな、と思わせるような人たちで、あることないことを言いふらしてしまう。私にはそれほど害は及びませんでしたが、両親は苦労していそうだなと、はっきりとは分からないまでもうすうす感じていましたし、数年経って確認してみたら、やはりそうでした。
こちらに来てから知り合った方とお茶をしていたときも、その方が数十年前、まだ小さいころに家族でポーランドに住んでいたとき、やはり長年住んでいた日本人の奥さんが面倒な人で、お母さんが苦労していた、と話してくれました。なんでもその奥様、その方のお母様に対して「服装がなってないから着替えてきなさい」「ハンドバックは最低でも6個はないと」と言ったのだとか。一度「服が合ってないから帰りなさい」とまで言われたそうです。ひえ〜・・・当時は日本人の集まりの中でのルールがとても厳しかったようで、それに逆らうと村八分的な対応をされたと言っていました。
情報が手に入りづらい時代には上記のような集まりもそれなりに意味があったのかもしれませんが、インターネットがある現代にはたして本当に必要かどうか。一考を強くお勧めします。例えば、通勤、通学の便を考えたらどこか最適だろうか、治安はどうか、周りにスーパーはあるか、趣味の活動はしやすいか、など、選択肢はいくつもあります。子供がいるなら、その子が通う学校の近くの方がいいでしょうし(送り迎えを家族がするから)、サッカースタジアムの近くはいやだとか、または日系の病院が近くにある方がよい、という人もいるかもしれません。自分にとって何が重要か、ぜひ見極めてください。
ちなみに、これは日本人に限った話ではありません。かつて中国人の友人が「中国人はお互いに冷たい」と言ったことがあります。私の周りの中国人はみな仲が良く、助け合っているところを見ていたので驚いて、「本当?」と聞き返したら、「そうだよ。だって中国人は中国人をだますもの」と答えました。同国人に対する突き放した見方はさすがと思いました。だからこそ、友達になったら親身になるのかもしれません。
我が家は二人の通学先への利便性重視で考えましたが、決め手になったのは、実はよさそうなパブが目の前にあることでした。疲れたらおいしいビールをすぐそこで飲める、これも大事なことです。

11.6.18

コーヒーマシーンにもお国柄が出るらしい

購入してから3年目になろうかというところで、とうとう我が家のコーヒーマシーンが壊れてしまいました。豆を粉砕するところからできる機械で重宝していたんですが、豆を砕く部分が故障したらしく、コーヒーが粉となってフィルターの中に落ちてこないという事態に。
ミキサーで豆を砕いてから自分でフィルターにセットするという方法もありますが、面倒だし、もう壊れた機械をいつまでもだましだまし使えるものなのか、という疑問もあったので、買い換えることにしました。外で飲んだら最低でも2ポンドはするので、二人で4ポンド、前の機械は100ポンドぐらいだったので、今回もその価格帯のものにすればまあ1ヶ月もあれば元は取れるでしょ、という考えです。
で、やってきましたジョン・ルイス (John Lewis)。家電は大体ここで見て、よさそうなら購入、なかったらアマゾンを探すというのが我が家のルーティンです。日本だと家電屋さんは立派だし、それなりに安く手に入れることもできますが、あのレベルのお店はイギリスにはないと思います。百貨店か量販店に行って買うか、アマゾンなどの通販で買うことが多いんじゃないでしょうか。ちなみに、電気屋はトッテナムコート・ロード沿いに集まってますが、秋葉原には遠く及びません。
コーヒーマシーン売り場を見ると、これなら喫茶店がすぐにも開けるんじゃない?と思わせるような機械がずらり。しかし、我が家にはそんなものは必要ない。豆を挽いて淹れるというシンプルな機能さえあれば充分なのですが、見当たらず、定員さんに聞いてみることに。すると、デロンギの数百ポンドはする機械を勧めてくれましたが、値段もさることながら機能が多すぎてかえって使いづらそうだったので、「もっとシンプルなのものでいいです」と伝えると、「これかなあ」と奥の棚にあったものを見せてくれました。たしかに豆から挽いて淹れるだけのもので、100ポンドを切っていたのでお買い得、と一瞬思ったのですが、次の定員さんの言葉に耳を疑いました。曰く、「この機械で淹れると、ぬるくなると思うよ」と。
あまりに私たちがぽかんとしてたからか、定員さんが補足で説明してくれました。「アメリカ人はコーヒーを買ったらすぐ飲むだろう?だからあまり熱すぎると都合が悪い。ヨーロッパではみなマグに入れて、話をしたりしながらゆっくり飲むから、最初から熱い方がいい。だからアメリカとヨーロッパでは機械の造りが違っていて、今見せてるのはアメリカの会社の製品だから、ぬるいと思うよ」
そんなことってあるのかなあと半信半疑でしたが、定員さんの言葉を信じることにしまして、それならネットで探そうかということになりました。
この話を聞いて思い出したのが、マクドナルドのコーヒーの温度をめぐって、アメリカで争われた裁判です。1992年にコーヒーをこぼしてしまって重いやけどを負った高齢の女性がマクドナルドを相手に「コーヒーが熱すぎる」と訴訟を起こし、和解金を支払わせた訴訟ですが、当初からコーヒーをこぼしただけで訴訟になるなんて、と話題になったようです。その後マクドナルドはカップに注意書きを大きく書くようになったようですが。イギリスでも似たような訴訟はありましたが、「コーヒーや紅茶は熱い湯で淹れるものだし、熱ければ待てばいいわけで、企業側には問題ない」ということになったようです。
飲み物の温度と機械ってお国柄が出るらしい、ということを初めて知った次第でした。

8.6.18

見間違い

とある江戸琳派の授業を一回だけ受け持つことになり、酒井抱一の12ヶ月図(掛け軸)をスキャンしていました。スキャンした画像は横になってパソコンに表示されるわけですが、それを見て旦那さんがつぶやきました。
「ずいぶん太った雀だなあ」
見てみたら、雀ではなかったのでこう返しました。
「それ、鶉だよ」
「・・・」
ま、横だと分かりにくいですからね。

24.5.18

東京が旅行者に優しい街になるとしたら 2 カード払いができると助かる

イギリスを含め、いくつかの国ではクレジットカードまたはデビットカード払いで買い物をすることが一般的です。かくいう私もデビットカードを頻繁に使うので、ATMで現金を下ろすことはほとんどありません。支払いをするときは、カードを機械に入れて暗証番号を入力するか、コンタクトレス機能の機械であればそれにカードをかざすだけで終了です。友人と外食して割り勘で支払うときもカードでできます。我が家の場合、現金を使うのは近所のお肉屋さんで買い物をするときか、外でトイレに行くときでしょうか。駅や公園のトイレはお金を払わないと入れない仕組みになっているからです。
もちろん、現金払いにはそれなりのメリットがあることも事実です。日本のように、貨幣の品質が高く、容易に偽金を作れないような国であれば、現金重視になるでしょうし、クレジットカードを持てない人にとってはなおさらでしょう。ただし、旅行者にとってみれば、いちいちお金を下ろすのはやはり手間で、また大金を持って歩くのも億劫です。
日本でもカード払いができるところが増えると楽なのですが。

16.5.18

東京が旅行者に優しい街になるとしたら 1

3月にロンドンの友人が調査で東京へやって来ました。郊外の美術館での調査だったので、交通案内兼通訳として私も同行しました。そのとき彼女が言っていたのが、「東京の街中に、もっとベンチがあるといいのに。」仕事などで来ている人はまだしも、旅行で来ている人は、歩き疲れたら少し休みたくなるものです。そのときにベンチがあるといいのになあということでした。イギリスの都会であれば、公園(park, squareなど)があちこちにあるので、その中のベンチや芝生に座って休憩できます。ちなみに、芝生は「もう一つのベッド」です。
それから、「街中にごみ箱があると嬉しいんだけど」、とも言っていました。たしかに日本ではあまり見かけないかもしれません。街中でごみを捨てない、は日本人の美徳の1つではありますが、旅行客にとっては不便でしょう。ご飯を食べるたびにレストランや喫茶店に入らないといけないわけですし、当然高くつきます。安くておいしいご飯を売っているコンビニで調達して、道すがら食べることが必要なときだってあるわけです。ごみ箱がないと、そのごみをずっと持っていないといけないので面倒です。
彼女はコンビニで買ったお昼を外で食べようとして、運良くベンチを見つけたのはいいものの、周りの人たちが何も食べていないので、「ここで食べていいんだろうか」とかなり悩んだそうです。もちろん食べていいんだよ、と伝えましたが、食べることに対する公私の考え方には興味深いものがあります。イギリスでは、外で食べる人をしょっちゅう見かけます。春から夏にかけての天気のよい日なんて、公園はたちまちピクニック場と化します。歩きながらものを食べる人もたくさんいます。対して日本だとそれほど見かけないように思います。花見がありますが、あれは桜が咲いているからOKになるわけで、普段から桜の下でご飯を食べているわけではありません。日本人は食べることを私的なものとして捉えているのでしょうか?だから街中では見かけないのか?などと考えてしまいます。
友人は「桜はきれいだけど、何も桜の下で宴会をしなくてもいいじゃない?歩きながら見れば充分じゃない?」と言っていましたが、いやいや、日本には花見というものが昔からあって、春をみんなで楽しむんだよ、などと説明したものの、じゃイギリス人にとってのピクニックって何なのだ、あれだって自然を楽しむもんじゃないのか、もしかしてそうじゃないのか、と質問が渦巻いてきました。彼女に会ったら、また聞いてみたいと思います。

23.4.18

キャサリン妃第3子出産から人間の身体とお産について思いを巡らす

ウィリアム王子とキャサリン公爵夫人の間に第3子が生まれました。めでたい。
王位継承権は第5位、名前は何になるかはまだ発表されていません。今日は聖ジョージ(St George 聖ゲオルギウス)の日なので、慣習からいくとジョージになりますが、お兄さんがジョージなので別の名前になるらしいです。
それは本題ではなくて、私が感心するのは、キャサリン妃が赤ちゃんを抱いて病院の玄関に出てくるときの服装です。赤いワンピースにばっちり化粧、そしてヒール。しかもピンヒール!普段でも履きこなすのは難しい靴を、出産直後の、疲れているなんて言葉では形容できないであろう状態のときに、普段と変わらず履いている!第1子出産後の映像を見た時の衝撃は忘れられません。今回もそうだったことにまた驚きです。もちろん、一般人では受けられないような、産前・出産・産後ケアを受けているとは思うのですが、これを見るとヨーロッパ人女性の体力は並々ならぬものがあるな、と圧倒されてしまいます。

ヤマザキマリさんの『イタリア家族 風林火山』(ぶんか社、2010年)にはヤマザキさんが息子さんをイタリアで出産したときの話があるのですが、出産直後、身体がいかにきつかったかを描いています。お子さんを出産して数十分後、看護師さんから「そろそろあなたも病室に移動してね」と言われ、「どうやって移動するんですか?」と聞くヤマザキさんに、「もちろん歩いてじゃない!」と言ったのだそうです。それでヤマザキさんは一応起き上がろうとしたものの、まったく身体が持ち上がらず、担架で運ばれました。
「出産して数十分しかたっていないのに 立って歩いて帰れるイタリア女のスタミナに東洋女はちょっとついていけない」
「タンカで運ばれてきたのはその病室で私だけだった・・・」(p. 151)と言っています。
私の周りの日本人と中国人の友人に聞いても、誰もが「出産直後にピンヒール履いて歩けるのはすごい」「アジア人女性にはありえない。どうかしてる」(←おい)と異口同音に言います。広東出身の友人曰く、中国の女性は出産すると1ヶ月は布団から起きない慣習があったようで、それは疲れている女性に悪い気が入らないように、とにかく休ませるためだ、というのです。さすがに現代ではやっていないようですが、それでもアジア人女性にとって、出産の身体的負担は結構大きいものに変わりはありません。
もちろん、ヨーロッパ人女性のような体力をつけよう、というつもりはまったくなく、また、中国人女性のように1ヶ月布団から出ないようにしようというのでもありません。どちらも非現実的です。そうではなくて、せっかく医療も進歩してるのだから、お産が楽になるならそのような治療を受けてもよいと思いますし、それで産後が楽になるなら、なおいいんじゃないでしょうか、と思います。
私は旦那さんに以前、「私はシマウマのお母さんがよかった」と言ったことがあります。子供のシマウマは生まれてものの1、2時間で走れるようになるらしいとのこと、なんて羨ましい!と思っての発言です。お母さんシマウマもすぐ動けるようですし、日常生活にすぐ戻れるのもいいなと思います。対して人間はといえば、お母さんは回復に時間がかかるし、子供は育てるのに時間も労力もつぎ込まなければならない存在です。人間の進化はなぜこの段階で止まってしまったのか。できることなら、楽なお産ができるようになるまで頑張ってほしかった。でも、人間には労力と時間をつぎ込んで育ててきた能によって研究・開発してきた医療があるので、それで何とかならないのかな、と希望を一応持っています。一応、というのは、高額なら諦めざるを得ないからです。悲しいかな、人間社会。
ちなみに、前述の「シマウマのお母さん」発言は旦那さんに相当に驚かれました。驚きのあまり、旦那さんが発した言葉は「・・・でもシマウマはライオンに捕まって、食べられちゃうかもしれないんだよ?」がやっとでした。その後しばらく何もありませんでしたが、最近『サピエンス全史』を読んだようで、次のことを教えてくれました。人間が二足歩行を始めた結果、骨盤が小さくなり、結果産道が小さくなり、お産が大変になった、つまり進化の結果お産が難しいものになったそうです。あらら。

21.4.18

翻訳について考えさせられる商品

日本語→英語だけではなく、英語→日本語にも、ものすごい訳をつけて、しかも世の中に出回っているものがあります。一番いい例は、Superdry。おそらくイギリスに来た人なら一回は目にしたことがあるであろうイギリスのアパレルブランドですが、これには日本語訳がついています。それは、
「極度乾燥(しなさい)」。
ぜひネットで検索してみて下さい。ロゴにばっちり入っています。
写真は旦那さんが購入したダウンジャケットのジッパー。ここにもちゃんと入ってます。

初めて見たときは「何かのぱちもん?」と思ったのですが、ちゃんとしたブランドなのです。About Us のページには、「アメリカのビンテージと日本にヒントを得たグラフィックを、イギリススタイルで融合する」と書いてあります。ま、何でもありですね。
あえて弁護すると、品質は結構よいです。ユニクロと張り合えます。リージェント・ストリートを始めとしてヒースロー空港などお店も何店舗もあり、いつも人で賑わっているのを見ると、イギリスで受け入れられてるのは確かです。
ブランドの設立については、イギリス人の若者二人が東京に遊びに来て、「日本のものはかっこいい、super dryだ!」と思ったのがきっかけ、と聞いたことがあります。それをグーグル翻訳か何かに入れたのでしょう、でなければ「(しなさい)」なんて出てこないはず。このブランドのものを見てると、デザインに中国で使われている簡体字が混ざっていたり、意味不明な日本語がついていることがよくあるので(「Osaka 6」とか。大阪と6は何のつながりがあるのか?そしてなんと「会員証な」と入っている)、「よく分からないけど、なんだかかっこいい」という感覚で使っているんでしょうね。日本で見ないのは、おそらく某ビール名と同じなので使えないからではないかと思います。
ものはよい、でもロゴは意味不明・・・って日本でもありますが、面白いだけで済ませていいのだろうか、という気持ちにはさせます。
グーグル翻訳の精度も上がっている今、手軽に意味を知るには格好の機能ですが、きちんとやろうと思うと、翻訳って本当は「時間×手間×お金」という、膨大なエネルギーをかけて出来上がるものです。前職で学芸員をしていた頃、展覧会開始2ヶ月を切ろうかというところで、いきなり上司から「解説を全部英語訳つけて」と言われて頭にきたことがありました。海外からのお客さんにも来て楽しんでもらいたいという、その心意気はよいのです。が、そのための方法があまりにも安易すぎました。お金はかけたくないから日本美術に詳しいプロの翻訳家をつけることはしたくない、日本語からそのまま英語にすれば通じるはずだから、短期間でできるでしょ、というのが見え見えなのです。これではうまくいくはずもありません。
直訳でも大丈夫と思わせてしまうのは何なのか、これはやっぱり人間は育った言語環境の呪縛から永遠に自由になれない、ということなのか、と気が重くなります。笑っているだけで済むならまだいいのかもしれませんが。

9.4.18

Your cheek might drop?

「半年間に起きたこと」と書きながら、ロンドンに戻る直前の話から始まるわけですが、ご容赦を。
羽田空港の手荷物検査を通り、制限エリアに入ったときのこと。旦那さんが六厘舎でつけ麺を食べるという恒例の儀式を執り行ったあと、「お土産でも見ようか」ということになりました。歩いていると見つけたのは、東京ミルクチーズ工場なるものの看板。にっこり笑う牛さんの下に書かれていた英文にふと立ち止まる我々。

YOUR CHEEK MIGHT DROP.

私・旦那さん:「(多分、『ほっぺたが落ちるほど(おいしい)』を直訳したんだろう)」

ということを瞬時に悟った我々、その場で疑問を確かめ合います。
私:「なんで will じゃなくて might なんだろう?広告にしては控えめすぎだよね?Google翻訳でこう出てきたのかな?結構難しくない?」
旦那さん:「うん。それに cheekって普通複数で使うよね?」
私:「そうじゃない?」
旦那さん:「両方合わせて集合名詞として単数扱い、とかないよね?」
私:「さすがにないと思う」
旦那さん:「じゃあこれってさ、『片方のほっぺたがもしかすると落ちちゃうかも』ってことでしょ?」
私:「うわ、ホラーだね!」

帰国してからインターネットで検索してみたら、英語話者にはやはり通じないようで、「この表現を見て My jaw dropped. でした」というのがありました。落ちるのは jaw つまり顎です。これは驚いたときに口がぽかんと開いてしまうことを言います。ロゴを発表する前になぜ見てもらわなかったのか、それともそれを含めて狙ってやっているのか、と考えてしまいました。
でも問題はともかくとして、今でもこのフレーズとちょっととぼけた表情のある牛さんを思い浮かべると思わず笑ってしまいます。


8.4.18

日本にいた半年間のまとめ(おおざっぱに)

博士課程2年目にあたる今年1年はフィールドワークでデータを集めてくることになっています。私もそうで、昨年10月から半年ほど東京に滞在して史料集めをしてきました。本当は1年いたかったのですが諸事情により半年にせざるをえませんでした。が、よい時間だったと思います。課題は集めたものをどれだけ読みこなせるか、今回集めた史料だけで本当に足りるのか、でしょうか・・・江戸時代の史料は尋常じゃない量が残り(さすがは紙の文化、羊皮紙文化ではこうはいかない)、しかも9割は未翻刻かつ未出版なので、よく言えば発掘しがいがあり、悪く言えば見つけた者勝ち、使った者勝ちのような印象があります。中世史であれば基本的な史料論が出版されてますが、近世史にはそれがない。これはもう近世史研究者にガイドラインを提示してもらえるのを大いに期待したいところです。
史料集め以外の活動はこんな感じでした。

2017年
10月
日本到着。10月というのに夏かと思うほど暑い。とにかく暑い。と思ったら台風で一週間以上ずーっと雨。毎日雨なので気が狂いそうになる。

11月
イギリス、アメリカ、オーストラリアの陶磁器愛好家グループに通訳として付き添い、九州へ。窯場や磁土発掘場など見学。言葉が出てこなくて冷や汗たれまくりだが、何とか乗り切る。
非常勤講師の友人に誘われて、ある大学で講義。ジャポニスムについてということで急いで勉強する。「何分でもいいです」と言ってくれたけれども40分程度の授業で勘弁してもらう。うすーくしか知らないので、昔にもっと勉強しておくんだったと激しく後悔。これが60分、90分の授業だとどうなるのか、と気が遠くなる。昨今の学生はスマホでパワーポイントを撮影するらしい。何人かいたので、まあ興味を引くことは出来たのかな、と自分を慰める。
それにしても、今の非常勤講師はあまりに大変である。友人は試験問題をあらかじめ配って解答を準備させた上で、それを試験本番に持ってこさせ、解答用紙に書かせると言っていた。それって試験なの?と聞いてみたが、そうしないと単位を落とす学生が多いのだそう。高等教育とは何かを考えさせられる。

12月
発表1つ。出来は分からないけど新しい出会いもあってよかったと思う。年末にロンドンへ戻る。
新年をスコットランドはエディンバラで迎える。イングランドとはまた違う年越しで面白い。元日はエディンバラ動物圓でペンギンの行進を見て興奮。

2018年
1月
発表2つ、茶の湯関係と近世史で。分野が違うと興味はこうも違うのか、と驚く。

2月
奨学金応募書類の準備に追われる。指導教官から研究計画書のだめ出しを大いにくらう。どれくらいかというと、毎行赤が入るぐらい。内容はもちろん、イギリス英語にお厳しい方なので綴りを全て直してくれたのだが、申し訳なさの極みである。日本語だと漢字を間違っている感覚に近いかな。徐々に慣れてきたとはいえ至る所にトラップありまくりである。maneuverはmanoeuvreなんて、知らなきゃ書けるはずもない。全面書き直して何とか提出。受かりますように!!
地方へ調査に出かけて公立図書館の対応の素晴らしさに感動。皆さんすばらしいお仕事をされております。

3月
都内及び地方で調査。旦那さん来日。昨年末に私の祖父が亡くなったので納骨を行う。納骨に先だち本堂でお経を尼さんと一緒にみんなで読む(そういうものなの?)しかも10ページ以上。家族全員が戸惑ってぼそぼそと読む中、旦那さんは長年のバス経験者として朗々と読む。最後の一節だけ節回しが異なるけれども、そこもばっちりクリア。尼さんから「○○家の方は音楽の才能がおありですね」とお褒めの言葉をいただき、旦那さんはその後皆から誉められまくる。
一緒に博士課程で勉強している友人が来日、調査に通訳として同行。

4月
イギリスへ帰国。

この間、友人、知人と積もりに積もりすぎた話を共有し、自分の今後の生き方について思いを馳せました。
時差ぼけから回復しつつあるので、半年間に起きたことをもう少し書いてみようと思います。

6.4.18

マーチモント・ストリートの桜


ロンドンに戻りまして、昨日Doctoral School へ行ってチェックインをしてきました。フィールドワークから戻ったら、一週間以内にパスポートとビザを持ってチェックインせい、ということなのです。政府のビザ統制が厳しいので仕方ないのかもしれませんが、博士課程なのに遊ぶ人もそういないだろうし、厳しすぎるのではと思っています。
チェックイン自体は数分で終わったので食料品の買い出しへ。上はマーチモント・ストリートに咲いていた桜(のはず)。昨日は天気がとても良く、青空に薄いピンク色がよく映えていました。ロンドンは今が桜が満開になるころです。


5.3.18

From Kanazawa with Love


金沢は成巽閣にて。帰ろうと傘を取ったらハート形の文様を持ったお客さん。今日は寒かったですね。

10.2.18

The Death of Stalin の感想

11月、The Death of Stalin を観てきました。題名通り、スターリンが急死してからフルシチョフが実権を握るまでの権力闘争をコメディとして描いたもの。ソビエト史はそれほど詳しくないですが、事実を基にしているので笑いとのギャップが面白い、というか黒すぎて笑えるけれどもおそらく事実は・・・と考え出すと笑えない、よく作ったね、これ・・・という映画でした。
そもそもは映画のポスターを見たときに、ソビエト旗を背景にアクの強そうなおじさん5人がずらっと並んでいるのが強烈で、「これは何だ・・・?」と思い、トレーラーをYouTube
で見てみたら案の定というか、これは今見ないといかん、ロシア革命100年だし、ということで行ってきました。
イギリスの映画なので皆英語を話していて、そこは事実とはもちろん違うわけですが、だからこそコメディ感が増すという側面もあると思います。旦那さんは「でもロシア語じゃないのがなあ」と言ってましたが、いやいや、あれをロシア語で演じたら洒落にならないというか、あまりに事実と近すぎて笑えないと思います。なんせ、次のリーダーを誰にする、これからの委員会をどうする、という水面下の駆け引きの裏で、ばったばったと人が殺されていくのです。主役たちの背景に映っている、連行されていく人たちや、階段の上から転がり落ちてくる人、そうかと思えばすんでのところで銃殺を免れる人など、これぞスターリン時代、という描写がふんだんに盛り込まれています。
私にとってはソビエト連邦はすでに教科書の中の世界で、あまり実感のない世界ではあります。しかし、この映画はそんな人にもスターリン時代の苛烈さや、独裁政治のなれの果ては喜劇と紙一重ということをこれでもかというほど、でもコメディなので適度に距離を取りつつ見せてくれます。そしてもちろん笑えます。だから、ソビエト時代を知る人にとっては大受けすること間違いないでしょう。「マレンコフいたなー!」とか、「ベリヤねえ・・・」と思える人には面白いはず。事実、私たちが行った当日はご年配のお客さんで満員で、ものすごくうけていました。
悲劇は喜劇、逆もまた然り、という言葉を思い出したのでした。

*日本でも公開されるとのこと、必見です(2018年4月8日追記)。