21.4.18

翻訳について考えさせられる商品

日本語→英語だけではなく、英語→日本語にも、ものすごい訳をつけて、しかも世の中に出回っているものがあります。一番いい例は、Superdry。おそらくイギリスに来た人なら一回は目にしたことがあるであろうイギリスのアパレルブランドですが、これには日本語訳がついています。それは、
「極度乾燥(しなさい)」。
ぜひネットで検索してみて下さい。ロゴにばっちり入っています。
写真は旦那さんが購入したダウンジャケットのジッパー。ここにもちゃんと入ってます。

初めて見たときは「何かのぱちもん?」と思ったのですが、ちゃんとしたブランドなのです。About Us のページには、「アメリカのビンテージと日本にヒントを得たグラフィックを、イギリススタイルで融合する」と書いてあります。ま、何でもありですね。
あえて弁護すると、品質は結構よいです。ユニクロと張り合えます。リージェント・ストリートを始めとしてヒースロー空港などお店も何店舗もあり、いつも人で賑わっているのを見ると、イギリスで受け入れられてるのは確かです。
ブランドの設立については、イギリス人の若者二人が東京に遊びに来て、「日本のものはかっこいい、super dryだ!」と思ったのがきっかけ、と聞いたことがあります。それをグーグル翻訳か何かに入れたのでしょう、でなければ「(しなさい)」なんて出てこないはず。このブランドのものを見てると、デザインに中国で使われている簡体字が混ざっていたり、意味不明な日本語がついていることがよくあるので(「Osaka 6」とか。大阪と6は何のつながりがあるのか?そしてなんと「会員証な」と入っている)、「よく分からないけど、なんだかかっこいい」という感覚で使っているんでしょうね。日本で見ないのは、おそらく某ビール名と同じなので使えないからではないかと思います。
ものはよい、でもロゴは意味不明・・・って日本でもありますが、面白いだけで済ませていいのだろうか、という気持ちにはさせます。
グーグル翻訳の精度も上がっている今、手軽に意味を知るには格好の機能ですが、きちんとやろうと思うと、翻訳って本当は「時間×手間×お金」という、膨大なエネルギーをかけて出来上がるものです。前職で学芸員をしていた頃、展覧会開始2ヶ月を切ろうかというところで、いきなり上司から「解説を全部英語訳つけて」と言われて頭にきたことがありました。海外からのお客さんにも来て楽しんでもらいたいという、その心意気はよいのです。が、そのための方法があまりにも安易すぎました。お金はかけたくないから日本美術に詳しいプロの翻訳家をつけることはしたくない、日本語からそのまま英語にすれば通じるはずだから、短期間でできるでしょ、というのが見え見えなのです。これではうまくいくはずもありません。
直訳でも大丈夫と思わせてしまうのは何なのか、これはやっぱり人間は育った言語環境の呪縛から永遠に自由になれない、ということなのか、と気が重くなります。笑っているだけで済むならまだいいのかもしれませんが。