12.4.16

肖像画から考える「枠」

ナショナル・ポートレート・ギャラリーで "Russia and the Arts: The Age of Tolstoy and Tchaikovsky" を開催中です。ロシアのトレチャコフ美術館から19世紀の肖像画がおよそ20点貸し出されています。
数年前見た「忘れ得ぬロシア」展以来、ロシア18・19世紀の絵画は結構好きで展示が近くであれば見に行ってました。光に対する鋭敏な感覚(北に住んだ経験のある人なら多分納得してくれると思う)とそれに支えられた色彩感覚、精緻な質感描写に驚いたからです。
残念なことに、19世紀のロシア文学や音楽はとても有名なのに、絵画は日本での認知がまだ薄いように感じます。学生のときに西洋美術史の授業を取ったことはありましたが、ロシアってなかなか紹介されない。20世紀のアヴァンギャルドが取り上げられるぐらいでしょうか。
ちなみに、今回の展覧会の副題は「トルストイとチャイコフスキーの時代」。今BBCでトルストイの『戦争と平和』の実写版ドラマをやっているからではないかと推察します。それにしても、つい数年前にキーラ・ナイトレイ主演で『アンナ・カレーニナ』の映画がありましたし、イギリスってロシア文学好きだなあと今回改めて思いました。

この展覧会、展示数はさほど多くはありませんが、その分じっくり見ることができます。何よりも解説が素晴らしく、見るポイント、画家と被写体となった人物との関係、そして人物の人となりを簡潔に、そして格調高い文章で綴っています。「こういう表現があるのか」と新鮮でした。
いつも美術館や博物館で西洋絵画や彫刻を見ていると、この技法や表現は西洋人の顔と身体を表すための技法であって、決して東洋人向けではない、ということを突きつけられるような気もします。よく西洋美術で「写実」または「リアリズム」ということが言われますが、同じ画家が当時東洋人を見たとして、その通りに描けたのだろうかと想像することがあります。というのも、これはもう亡くなった画家(出身は忘れましたがヨーロッパ出身だったとうっすら記憶)が日本人を描いた絵を見たときに、西洋人が日本人を描く時によく描く、典型的なつり目だったからです。モデル本人はぱっちり二重なんですけど(写真が偶然あった)。
つまり、西洋美術の写実ってあくまで西洋人のための写実であって、その枠の外にあるものは対象外らしい。だからモデルが前にいても、枠の外のものはよくある常套手段で済ませちゃうんだろうなと考えた次第です。もちろん、そうじゃない画家もいるのでしょうけれど。
でも枠の外にあるものに対応するのってどの時代・場所でも大変ですよね。