17.4.16

なまものは強い

これは去年の11月頃でしたが、ロンドンで開催されていたハイパー・ジャパン・クリスマスマーケットに行こうかどうしようか、迷っていたときのこと。
日本食のお店が出ているようだったので、「どうする?」と旦那に聞いたところ、「行こう!」と即決でした。
当日。会場が近づくにつれ、増えてくるコスプレの人々にやや気圧されながらも会場到着。予想はしてましたが、多いですね。それにしても、コスプレって何か特定のアニメ・漫画キャラクターの恰好をすることだと漠然と思ってたのですが、そうでなくてもいいんですね。「あれは何のキャラクターだろう?」と思う方が多かったです。自分がアニメをほとんど知らないから見ても分からないだけかもしれませんが。
肝心の日本食は、お寿司や海鮮丼を出しているお店があったのでそこにしました。旦那はまぐろ丼を注文(自分が食べたものはど忘れしました。何だっけ・・・)。そこで感想を聞いてみることに。
私:「どう?おいしい?」
旦那:「うん。ほんとおいしい。涙出そう」
それは大げさじゃない?と思ったのですが、後から聞いたら本当に涙が出そうだったようで、ロンドンに来て2ヶ月、食にまだ慣れてなくて大変だったんだなあと、そこで気づきました。
お祭りでは日本の雑貨やらゲームやら漫画やら、色々なお店が出てはいましたが、ヴァーチャルの世界に浸ってゲームにのめり込んでいる人たちを見ていると、少し退廃的なものを感じました。出展者の中には陶磁器を売っているお店もあって、結構いい備前焼の器が売られていたりするんですけれど、手に取って見ている人は少なかったです。そして値段も張るので、さらに手が出ない。

そこは午前中で切り上げて、午後は Hunterian Museum へ行ってきました。「くまのプーさん」のモデルになった熊の頭蓋骨が展示されるからで、プーさん好きの旦那が「行きたい!」と言ったからです。
「いいよー」と上の空で返事をした私は、当日までに特に博物館のことを調べもせず行ったわけです。しかし、これがまたすごい博物館でして・・・
この博物館、 Royal College of Surgeons に属してます。つまり外科医師のための博物館で、もともと、ジョン・ハンターという解剖学者が集めたものがコレクションのもとになっています。なので、様々な動物(もちろん人間も)の標本・ホルマリン漬けの瓶が、棚の上から下までびっしり並んでるわけです(グーグルの画像検索をすると出てきます)。部屋に一歩入った瞬間、「うっ」と思いました。展示室を歩いていると、だんだん標本から出てくる何かにあてられそうな気がしたので、絵が飾ってある部屋に行ってみたわけですが、こちらも何らかの疾患を抱えた人の絵が所狭しと並んでました。
上の階の展示室は整形外科手術の歴史(戦争で負傷した兵士の顔を手術するところから始まったらしい)や、外科手術道具や、手術の技術発達について解説してました。

いってみれば、午前はまやかしの世界、午後はなまものの世界という強烈な対比を1日で見てきたわけですが、なまものは強いですね。生きていたもの、というか生きていたはずのもの、というのがそう思わせるのか。
ちなみに、プーさんのモデルになった熊の頭蓋骨は、1階展示室の隅にひっそりと展示されていました。動物園にやってくるお客さんがかわいさあまりに餌をあげていたのがあだとなり、虫歯になってしまったんだそうです。動物園と人間の関係について考えさせられました。