日付が変わってしまいましたが、今日はクリスマスということで、セント・ポール大聖堂で聖歌隊の合唱を聴きに行ってきました。教会で聖歌隊の音楽を聴くという経験が今まで一度も無かったので、どういうものなのか想像がつかなかったのですが、いやはや、圧巻でありました。
荘厳なオルガン演奏(演奏者はこの大聖堂専属のオルガニスト)に、透き通るようなボーイソプラノとパワーのある成人男性の合唱団。イングランド国教会の、まさにロンドンを象徴するような大聖堂ですから質が高いのは当たり前といえばそうですが、西洋音楽は教会を中心に発展してきたことを改めて思い知らされました。
演奏会のパンフレットでソリストの経歴を見ると、「○○教会の聖歌隊に所属」と書かれているのをよく見ます。聖歌隊が音楽教育の出発点になっているわけですね。
もっと驚いたのは、最後のお祈りのときに出てきた次の一節。
“Mighty God,
the government is on your shoulders:
guide the leaders of the nations
and bring in your kingdom of justice and righteousness:
Christ, the Word made flesh,
hear our prayer.”
国を支える信条として、アイデンティティーとしてキリスト教があるということに、そしてクリスマスという日にお祈りで唱える言葉だということに衝撃を受けました。もちろん今のイギリスは多民族で構成されているので、表立って言うことはあまり無いかもしれませんが。
これを見たであろう明治政府は焦っただろうなあ、と日本近代史のエッセイを書かねばならない当方としては思うところがありました。
江戸時代の日本をどう捉えるかについては様々な意見がありますが(連邦制や絶対主義など)、およそnationと呼べるようなものではないだろう、というのが一般的ではなかろうかと思います。
言語も度量衡も貨幣もばらばら、ゆるやかな連結で何とかまとまっていた江戸時代ですが、一応「国」と呼べるようなものとして機能していたわけで、ではそれを支えた信条や理論は何か?となると、実はすんなり分かるものではありません。なくてもよかったのかもしれません。
ただ、明治に入って列強の中に放り出されたらそうもいかないわけで、急いでnation造りに取りかかる、そのときにこういう言葉を聞いたら悩んだだろうなあ、と帰る道すがら思いました。