18.12.15

Inventory

フラットに入居してすぐに、inventoryの人がやって来ます。もともと「目録」とか「在庫」という意味ですが、要は部屋の状態や備え付けてあるものについて記録しておくことを指していて、入居時に記録したものを破損してしまったり、汚してしまったりすると、退去時に弁償代・清掃代を要求されます。不動産屋とは別の会社が行うことが多いようです。
私たちも、入居する時に不動産屋の担当者から「しばらくしたらinventoryがやって来るから」と言われました。入居して2,3日だったでしょうか、かくして女性のinventory担当者が来訪。「1時間くらいかかるけどいい?」と言われ、大丈夫ですよ、と答えたものの、「なんで1時間もかかるんだろう?」と不思議に思いました。日本で部屋を借りる時に、不動産屋(または大家)と中を一緒に見たことはありますが、そこまでかからなかったような気がしたからです。
すぐにその理由が判明。担当者は手にレコーダーを持ち、部屋のあらゆる所を見ながら状態をしゃべって録音していきます。例えば、「台所に入って左側に冷蔵庫と冷凍庫があり、その左から作り付け食器棚がある。その中にはワイングラス4本、大きな平皿が6枚、小さな平皿が5枚・・・」
今住んでいる家は家具だけではなくて食器も付いているので、細かい所まで確認していました。もちろん写真も撮っていきます。

これはディスクリプション(美術作品の記述)のよい例だ、と直感した私は、iPhoneの録音機能を作動させて、担当者の後にくっついていくことに(しかし、後で聞き返してみると小さい声に早口でなかなか聞き取れず、無念・・・)。旦那は部屋の写真を撮り、これで同じデータをこちらも持つことにしました。
「写真を撮ればいいじゃんか」と思わないでもないですが、言葉で記録していくのがこちらのやり方で、これは美術館でもそうです。学芸員養成の講座で聞いた話ではありますが、欧米の美術館が他館へ作品を貸し出す前の状態調査では、すべて言葉で書いて記録するのが常です。写真も撮りますが、それだけでは見過ごすからです。

家にはありがたいことにエアコンもついていまして、それを見ながら担当者、「居間にはエアコンが装備されていてメーカーはD, A, I, K, I, N・・・」。「それ、ダイキンって読むんですよ」と声を大にして言いたかったのをこらえて、inventoryはともかく終了。「何か質問とかある?」と聞かれたので、入居時から気になっていたことを聞いてみました。
部屋が横長の長方形だとして、その左下角を囲むようにL字形に作り付けの食器棚があるんですが、その食器棚が対辺側の壁と接する箇所(L字の一番上の所)の底板が足りていませんでした。材料の寸法を間違えたのか、建設途中で足りなくなってしまったのか、そこだけ隙間(10×20㎝くらい)空いていて、壁の後ろにある配管が見えているという有様。
「ここに隙間があるんですが」と言ってみたところ、担当者は「ああ、そういうのよくあるから心配しなくていいわよ。でも書類には一応記録しておくわね」とのお返事。「いや、よくあっちゃいかんだろう」と思いましたが、でもとりあえずこちらから指摘しておいたわけだし、退去時にこの隙間で請求されるなんてことはないでしょう(多分)。「疑わしきはこちらから言っておけ」という、学芸員経験が生きました(大げさ)。

ちなみに、担当者は家具だけではなくて、電気と水道のメーターも見ていきました。旦那が目盛りの数字も撮影していたのが後日とても役立つことになります。