道の反対側を見やると、ちょうど向こうから大勢の人がドイツ国旗やザクセン州旗を掲げて、何か叫びながら行進しているところでした。それだけではなくて、複数の警官が急いでこちらへ駆けてくるではないですか。
その場にいた大学生らしき男の子に何があるのか聞いてみたところ、難民受け入れ反対を掲げる団体がデモ行進をしている、と言われました。
トラムの運転手のおじさんが、車内で待ってていいよと言ってくれたので中に入り、行進をひとしきり見ることに。30分ほど経ってようやく封鎖も解除され、トラムは動き出しました。
その後スーパーで買い物をして帰る途中のこと。雨が降り出して傘を差していたため、私はまったく気がつかなかったのですが、道の反対側から歩いてきた人たちが私たちをみて、"Auslaender! (外国人!)" と叫んだと友人たちが言っていました。
ドレスデンではペギダ(Pegida)と呼ばれる反イスラムグループが急速に拡大しているようで、難民の受け入れを拒否するようデモ行進をしばしば行っていることを後で知りました。つい数ヶ月前にはケルンで反イスラムを掲げる人々と警察との衝突があったばかりです。難民受け入れを巡って対立が激化していることを間近に見ることができました。反イスラムが反外国人になっていくのは現在進行形ということも。
メルケル首相は移民・難民受容に積極的なようですが、彼らをどうやって支援していくのかが問われるでしょう。イギリスでも日本でもそうですが、国の経済成長を加速させたいのであれば移民等海外からの労働力を呼び込むべき、という主張をよく聞きます。移民を「人」として見ていないような感じがして個人的にやや嫌悪感を覚えますが(足下見てるよなあと思う)、理論的に、そして数字だけ追えばそうなのかもしれません。日本の人口はこれからどんどん減っていくでしょうから。
ただし、やってきた人々の日常生活を支援していく制度等が無い限り、彼らが社会に適応していくのは難しいと思います。数年前のロンドンテロも、社会に自分の居場所が無いと感じるイスラム教徒の若者の犯行でした。日本だって、例えばムスリムの社員や学生から「日に何度かお祈りをしたいです」と言われて、「じゃあ祈祷室はこちらで」というやりとりができるところなんて、ほとんど無いでしょう。
言葉も文化も異なる人々を受け入れることの難しさと、世界情勢の深刻さを目の当たりにしたのでした。