先月末、20日から約一週間の予定で友人3人とベルリン、ドレスデン、プラハに行ってきましたが、初日に電車の中で財布をすられてしまいました。
思い出すのも腹立たしいのですが実に巧妙で悪質な手口でやられまして、我々4人のベルリンに対する期待度が一気に下がりました。それはもう見事なまでに。
その経緯はさておき、財布の中には大事なものがたくさん入ってるわけです。デビッドカードやクレジットカードの利用を止めるのはもちろんですが、私の場合、中にBRPカードを入れていたのが致命的でした。
Biometric Residence Permits、略してBRPカードとは、指紋認証(もちろん両手指10本すべて)を含む滞在許可証のことで、去年からはイギリス滞在が6ヶ月以上になる非EEA国籍を持つ人は、必ず申請しなければならなくなりました。イギリスに入国するときに必要なもので、これが無いと入れません。入国管理のときにこのカードを見せないと、出発地に送り返されてしまいます。たとえイギリスに家があろうと、大学の在学証明があろうと、BRPなくしては戻れないのです。
なので、旅行から帰る前に、このカード取得を申請しないといけません。イギリス国外でBRPをなくしてしまい、「現地のイギリスか日本の大使館に行けば何とかなるだろう」と思っている、そこのあなた。そう簡単には行きませんぞ。イギリス大使館と日本大使館は、BRPについては何もしてくれません。日本大使館は「それはイギリス大使館に聞いて下さい」というだけですし、イギリス大使館は「ビザのウェブサイトに行って、そこから申請してください」と答えるだけです。大使館とビザ発行業務は、イギリスの場合、別の組織のようです。
ところで、申請する前に、まず現地の警察に行って盗難届を出してもらって下さい。できるだけその日のうちに。英語で書類を出してくれるところはまず無いでしょうが、BRP申請時に必要となります。およそ親切・フレンドリーとはかけ離れたベルリン警察でしたが(これもベルリンの印象をさらに悪化させるのに役立ちました。まあ警察とはどこの国にいっても大抵こんなものかもしれない。英語でやりとりできるだけまだましと思いましょう)、盗難届を出してくれました。
では申請ですが、ここで注意したいことがあります。それは、今回申請するのは、replacement BRP visaというもので、これはBRPとは別物だということ。名前が似ているのでややこしいのですが、もしイギリス国外でなくした場合、まずはこの代用ビザを取得してイギリスに戻り、その後本式のBRPを申請する、という手順になります。このビザは発行から一ヶ月間だけ有効、その間にイギリスに一度だけ入れるというものです。なので、ビザをもらったらすぐ帰りましょう。本式BRPの申請も、結構時間がかかりますので。
では申請。UKVIのホームページから、BRPをなくしたことを届け出ます。すると、設定したメールアドレス宛にメールが届くので、そこにあるリンクから申請のページにとびます。アカウントを作ってから実際に申請作業が始まります(この作業をすると、向こうから紛失・盗難の旨を承知したことと、「1,2日で次の手順について説明するメールを返信します」というようなメールが来るのですが、向こうからの返信など待たずにすぐに申請作業を始めて下さい。結局、「ビザ申請ページに登録して申請を開始して下さい」という案内が来るだけです)。
この作業、初めてBRPを申請したときと同じくらい面倒くさいです。基本的な個人情報に始まり、過去10年の渡航歴、一緒に旅行している友人たちの氏名と生年月日等、全部で90項目以上あります。
この項目に全部答えると、顔写真と指紋を採るビザセンターの場所と日時を選びます。私の場合、ベルリンに一人残るか、友人たちと当初の予定通り行動してプラハで受け取るかのどちらかで迷いました。が、現金はすべて取られはしなかった(宿に置いていた鞄に100ユーロを残してあり、取られたのは70ユーロくらい)けれど、カードはすべて止めたのでお金の心配があり、後者を選択しました。ちょうどプラハに到着する日にビザセンターの予約枠が空いていたのは幸運としかいいようがありません。
すべて記入しおわったら、申請料金を払います。これはロンドンにいた旦那に頼みました。
また、この後TLScontactへの登録を勧められますが、これはぜひしておきましょう。というのは、このサービスの中にpriority visaというものがあり、普通のビザよりも優先して早く申請作業をしてくれるサービスを受け付けているからです。事例により異なりますが、5,6営業日でビザが届きます。私の場合は6日で届きました。もちろん有料で、結構な額を取られますが、このサービスがないと数週間(あるいはもっと)かかります。
次に、申請書類、ビザセンター予約確認の書類、身元証明の書類(supporting documents)、支払い証明書(メールでよい)、プライオリティー・ビザの申し込み確認書(これもメール)をすべて印刷します。必要そうなものはすべて持って行きましょう(警察の証明書も。事前にコピーはとって手元に残しておきましょう。私の場合、パスポート返送時に盗難証明書を返してくれました)。できれば2部ずつあるとよいかもしれません。
身元証明の書類は人によってその内容が異なりますが、私の場合は配偶者ビザなので、旦那の身元証明書も必要になります。内容は、一番最初に申請したときの書類とほぼ同じです。これは旦那がデータを一式保管していたので事なきを得ました。持っていたBRPの画像データも、以前パソコンに取り込んであったので助かりました(これがあるのとないのでは申請の進み具合に差が出るらしい)。
ベルリンにいるうちにすべてを印刷し、そこからようやく旅行を楽しむ余裕が少し出てきました。友人が連絡を取ってくれたシンガポール人の学生は、「ビザはちゃんと発行されるから安心して。準備ができたら旅行を楽しんで!」と言っていました。
さて3日後、ドレスデンから列車でプラハへ出発。私と友人Aが先に出発しました。到着してビザセンターの場所を調べた後、昼食をとり、私はビザセンターへ向かい、その間Aは観光することに。
プラハのビザセンターへ行って驚いたのは、その緩さでした。日本で申請したときは、ビザセンターに入る前にまず警備員に荷物の中身を見せ、金属探知機などで身体チェックをしたのですが、それがまったくありませんでした。待合室でも、申請に来ている人は自由に携帯をいじって暇つぶし中。
自分の順番が回ってきて受付に行くと、持ってきた書類をすべて担当者に見せ、別室に入るまで待つように言われます。このとき、パスポートと書類を返送する住所を書くように言われたのですが、ここで「あれ?」と思ったことが。
ビザホームページから申請するとき、受け取りを「ビザセンターに行って受け取る」を選択したはずなのに、なんで住所を書かないと行けないのか?と思ったのです(ビザ申請時にはパスポートをビザセンターに預けます。発行されたビザは、パスポートに貼られて返ってくるので、その受け取り先を書くようにということです)。不思議に思いながらも、旦那が取ってくれたホテルの名前と住所を書きました(この時点で、友人たちを見送る日に旦那がプラハに来てくれることになっていた)。
そして書類を持ったまま別室に案内され、顔写真と指紋を採って作業終了。受付に戻って先ほど思ったことを質問してみたところ、返ってきたのは次のような応え。
私:「申請するときに、ビザセンターで受け取ることを選んだはずなんですけど」
担当者:「ああ、ごめんなさい、ここではできないんです。見ての通り小さい役所だから私たちは書類とデータを受け取るだけで、これからワルシャワのイギリス大使館に送って発行してもらいます」
私:「ワ、ワルシャワっ!?」
担当者:「ホームページは全地域カバーできるように作られてるからそういう選択肢があったかもしれないけれども、ここはそうではなくて・・・でも大丈夫、発行されたビザはワルシャワからちゃんとその住所に送るから、安心してね。滞在先がホテルでもまったく問題ないわよ」
担当者は私を安心させるためか、にっこりしながら説明してくれましたが、これを聞いて逆に不安度が急上昇した私。そりゃお隣の国ですけど、本当に大丈夫なのか・・・でも考えてみれば、日本で申請に出した書類は、その後フィリピンに送られてビザはマニラから発行されましたから、それと同じようなものです。
ここですべての書類とパスポートを渡し、「無事発行されますように」と祈ってビザセンターを後にしたのでした。
その3日後、プラハ空港でロンドンに帰る友人たちを見送り、その数時間後に旦那と合流、その晩は空港近くのホテルに泊まって翌日市内のホテルへ移動、その4日後に無事ホテルにビザが貼られたパスポートが届きました(業者はDHLでした)。発行までに6日営業日+土日で、およそ一週間ほどかかったことになります。申請の進み具合は、UKVIの自分のアカウントから確認できますし、TLScontactからは、自分のメールアドレス宛に、書類受理やパスポート発送のお知らせが届くようになっています。DHLからも発送した旨のメールが来るので、そこに記載された番号で追跡できます。私の場合、UKVIから書類受理のメールが来るまでがやや時間がかかりましたが(土日含めて6日)、次の日には発送のメールが届き、そのさらに翌日にビザ付パスポートを手にしました。朝に届いたのですぐに飛行機を予約し、夕方の便でロンドンに帰ってきたという次第です。
到着したスタンステッド空港で私たちを迎えたのは、濃い霧が立ちこめる空の下で強風にはためくユニオン・ジャックという、これぞイギリスという風景でした。気温15度というとても6月とは思えない寒さででしたが、この光景とそれがもたらしてくれた安堵感は一生忘れないでしょう。
ビザは、きちんと手順を踏んで申請すれば必ず発行されるので、焦らず申請しましょう。これからイギリスに長期滞在するという人は、BRPを初回申請したときに提出した書類やパスポート、またBRPが届いたらその両面のコピーのデータを一式クラウドにあげておくとよいかもしれません。インターネットに接続さえできれば、いざというときにそれらを印刷してサポーティングドキュメントとして提出できます。学生であれば、入学時にもらえる在籍証明書や学生証なども。また、公共料金の支払い証明書もあるといいかもしれません。
BRPをなくしたらこういうことになる、というのは、私を含め友人たちの誰一人として知りませんでした。プラハで韓国人の友人とメッセンジャーでやりとりをしていたときに今回のことを伝えたら、彼女は"Wow..."と絶句しました。
残念ながら、SOASのホームページには対処法が載っていませんでした。留学生が多い学校のはずなんですけどね。「これだからSOASのアドミニストレーションはクソなんだよ!!」と友人たちと愚痴を言い合いました。旦那が見つけてくれた、The University of Warwick のホームページが一番分かりやすいです。
http://www2.warwick.ac.uk/study/international/immigration/current/lostpassportandvisas/
ベルリンで財布を盗まれた日の夜、必要なものに登録・申請してお金を払った後、気づけば夜中の3時になってました。その間、あらゆるホームページを探しまくり、寮のルームメートやその他友人たちに連絡を取りまくって情報を集めてくれた友人たちと、ロンドンから調べて手続きしてくれた旦那には感謝してもしきれません。
これからBRPの再発行手続きです。イギリスが、いかに毎年ビザ取得を難しくしているかを再び思い知ることになります。