12.6.16

ハプニングだらけの旅4 プラハ1

さて、お次はプラハ。
プラハ城を見終わった後、ロブコヴィッツ城を見たい私とA、市内で髪を切りたいVとそれにくっついていくことにしたPの二組に分かれて見学することになりました(なぜかプラハで髪を切る旅行客が多い)。
ロブコヴィッツ家はプラハの苦難の歴史とは切っても切り離すことのできない家で、三十年戦争の引き金となったプラハ投擲事件の被害者を匿ったのもこの家。大変裕福で、広大な土地や膨大な美術品コレクションを所有していましたが、第2次大戦前にナチスの手を逃れて国外逃亡せざるを得ず、当然財産は没収。やれ戦争が終わって財産が返却されたと思ったら、今度は共産主義国家になってしまってまた没収され、一族はチェコが民主主義国家になるまでの数十年間を、やはり海外で過ごさなければならなかったといいます。今はプラハに戻っているようで、その膨大なコレクションを管理・公開しています。ちなみに、オーディオガイドではご本人達が説明しています。
ハイドンやベートーヴェンなど、大物作曲家・演奏家を援助していたことはここで初めて知りました。特に、ベートーヴェンには毎月給料を支給していたようで、交響曲3番(「エロイカ」)、5番(「運命」)、6番(「田園」)はパトロンであったこの家の当主に捧げられたのだとか。直筆の楽譜も展示されていて見応えがありました。
その他の展示品もすばらしく、私とAは終始テンションが上がりっぱなしの状態で、興奮冷めやらぬまま城を後にしました。そして他友人二人と会うため、待ち合わせ場所へ向かいました。
到着して不思議に思ったのは、Vの髪の毛の長さがまったく変わっていないこと。理由を聞いてみると、午後4時頃に美容院に着いたものの、閉店時間だったらしいのです。仕方がないので、おいしいと評判のレストランに入って時間をつぶすことにした二人。ウェイターが特に何かを勧めることもなかったので、メニューを広げて料理のそばに星印がついていた、チーズを揚げたようなものと、ビールを頼みました。ところが、これが特においしいと感じられるものでもなかったようなのです。
しばらくしてウェイターがやってきて、「味はどう?」というようなことを聞いてきたので、「うーん、まあまあ」と応えたら、そのウェイターの返答に二人とも唖然としたのだそうです。「だって君たち、僕にお勧めの料理があるかどうか、聞かなかったじゃないか。料理のそばについている印は店が勧めたいだけで、おいしいとはかぎらないんだよ。僕には僕の意見があるからね」
初めて会う人に対してそう簡単には心を開かないといわれるチェコ人の気質が、レストランでも大いに発揮されたのでした。