29.6.16

財布を取り戻すまで3 アルファベットを電話で聞き取るのは難しい

連邦警察と地元警察をたらい回しにされたわけですが、ようやく目当ての部署に辿り着き、連絡先としてあちらのメールアドレスを書き留める段階になりました。しかし、メールアドレスを聞き取るというのは超難関。単語と文章ならともかく、単発の音を電話を通じて聞き取るというのは、結構難しいです。しかも、私も担当者も英語母語者ではないのでなおさらです。会話はだいたいこんな感じでした。
係員:「まずはb」
私:「えっ、bですか、pですか、それともv?」
係員:「bravoのbです」
私:「abのbですよね?」
係員:「そうですよ」
アルファベットにはフォネティックコードというものがあり、そのアルファベットが先頭に来る単語と一緒に伝えることで分かりやすくする通話表があるということを後で知りました。が、そのときはつゆ知らず。普段聞き慣れない単語をいきなり言われても、かえって混乱するだけでした(LimaのLとか)。なので、「abのbですよね?」のような確認をいちいちしていったわけです。それに、ここで聞き逃してメールを送ることができなかったら、財布を取り戻せない!という強迫観念に後押しされ、一文字ずつ、かなりしつこく聞き返しました。
係員:「次はp」
私:「pqrのp?」
係員:「そうです、Peterのp。次はo」
私:「lmnoのo?」
係員:「そうです、Oscarのo」
(中略)
係員「次はpunkt」
私:「・・・それピリオド(.)ですよね?」
係員:「そうそう」
ドイツ人なので普段使っている句読点がついドイツ語で出てしまったのでしょう。しかしこれだけではなかった。
係員:「次は####」
私:「えっ、何ですか?」
係員:「####」
私:「はあ?」
「####」がまったく聞き取れん。ただ、それまでに言われた文字数の長さから、おそらくこれではなかろうか、と思い当たるものが。
私:「それって、アルファベットのaが円の中に入っているものです?」
係員:「それですよ!」
そう、@のことでした。しかし、なぜ世界中で使われているものなのに名前が国によって違うのか。これぐらい統一すればよいではないか。ちなみに、ドイツ語ではこの記号のことを「Affenschwanz(猿のしっぽ)」とか「Klammeraffe(ぶら下がった猿)」などと言うんだそうです(そういえば今年は申年ですね)。音数が長かったように感じたので、この2つのうちどちらかを係員は言ったのだと思います(多分後者のような気がする)。
こんなやりとりをあと数分続けて、最後にもう一度すべて確認し、後でメールを送ることを伝えて電話を切ったときには、最初に電話をかけてから40分ほどが経っていました。この間、相手に何とか状況を伝えようと必死になったためか、話せば話すほど滑らかに英語が出てくるのを実感。が、ぐったりと疲れました。それでも、財布のありかと、連絡する相手が分かったのは幸いでした。
電話を切ってからずっと横で聞いていた旦那が言いました。
旦那:「いやあ、すごかったよ。話している間にどんどん英語がうまくなっていってたよ。こんなに話せたらいいよなあ」
私:「そう?じゃあお財布落としてみる?鍛えられるわよ」
旦那:「・・・いや、遠慮しとくよ・・・」